個人事業から法人へ|廃業届と引き継ぎで自分がやること
個人事業主が会社設立をして法人成りするとき、個人側で必要な手続きと引き継ぎを整理しました。freeeで自分で進める人が、抜けなく切り替えるための手順です。
個人事業主として活動してきて、会社設立に踏み切ることにした人。法人側の手続きは調べたけれど、個人側で何をすればいいのかが分からない——そういう場面のための記事です。
法人成りでは、法人を作る手続きと、個人事業をたたむ手続きの両方が必要になります。さらに、資産や契約を法人に引き継ぐ作業もあります。freeeで自分で進める人が、抜けなく切り替えられるように整理しました。
法人成りは「作る」と「たたむ」の両方

法人成りというのは、個人事業をやめて法人を作ることです。つまり、法人を作る手続きと、個人事業をたたむ手続きの両方が必要になります。
法人側は、freee会社設立で書類を作り、公証役場と法務局を経て登記を完了させる。この流れは、ゼロから会社設立をする場合と同じです。
個人側は、税務署に廃業届を出し、必要に応じて所得税の予定納税の減額申請などを行います。書類自体は多くありませんが、期限があるので忘れられません。
さらに、事業用の資産や取引先との契約を法人に引き継ぐ作業があります。ここがいちばん実務的で、しかも見落とされやすい部分です。
freeeで会社設立の入力を進めていると、法人側の手続きには案内が出ます。ただ、個人側の廃業や引き継ぎまでは案内されません。自分で管理する部分です。
タイミングの調整も必要です。個人事業をいつまでで区切り、法人をいつから動かすのか。会計の期間が重ならないように決める必要があります。
自分で法人成りを進めるなら、この2つの流れを並行して管理することになります。チェックリストを作っておくと抜けが減ります。
法人成りを選ぶ人の多くは、すでに事業が動いている状態で会社設立に踏み切ります。つまり、日々の仕事を回しながら手続きを進めることになります。まとまった時間が取りにくいぶん、何をいつやるのかを先に決めておく価値が大きい局面です。
以下では、個人側の手続きと引き継ぎの実務を順に見ていきます。
この章で参照した情報freee(バックオフィス基礎知識)「個人事業主からの法人化とは?必要な手続きや流れなどをわかりやすく解説」(2026年9月9日 確認)
個人事業の廃業届を出す

個人事業をやめるときは、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を出します。開業のときに出したものと同じ様式で、廃業のほうにチェックを入れる形です。
提出の期限は、廃業の日から1か月以内とされています。会社設立の手続きに追われていると忘れがちなので、登記が完了したら早めに片づけてください。
青色申告をしていた場合は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」も出します。こちらは、やめようとする年の翌年3月15日までが期限とされています。
消費税の課税事業者だった場合は、「事業廃止届出書」も必要になります。自分の状況に応じて、出すべき書類が変わります。
都道府県や市町村にも、個人事業税に関する届出が必要な場合があります。自治体によって扱いが違うので、確認してください。
freeeでは個人向けのサービスと法人向けのサービスが分かれています。廃業の書類については、個人側のサービスや税務署の様式を使うことになります。
自分で会社設立を進めた人なら、書類を作って出すこと自体には慣れているはずです。廃業届は枚数も少ないので、それほど負担にはなりません。
freeeで会社設立の書類を作りながら、個人側の廃業届も並行して準備しておくと効率的です。どちらも税務署に出す書類なので、まとめて持っていくこともできます。自分で動く回数を減らす工夫のひとつです。
なお、廃業した年の分は個人として確定申告が必要です。1月から廃業日までの所得を申告することになります。
この章で参照した情報国税庁「No.5100 新設法人の届出書類」(2026年9月9日 確認)
事業用の資産をどう引き継ぐか

個人事業で使っていたパソコンや車、設備などを法人でも使う場合、引き継ぎの方法を決める必要があります。
方法は主に3つ。個人から法人に売却する、現物出資として法人に入れる、個人のまま法人に貸す。それぞれ手続きと税務の扱いが違います。
売却がいちばん分かりやすい方法です。個人と法人のあいだで売買契約を結び、法人が代金を払います。金額は時価が基準になります。
現物出資は、資本金の一部として資産を入れる方法です。ただし金額によっては調査が必要になり、会社設立の手続きが重くなります。自分で進めるなら避けたほうが無難です。
貸す方法は、個人の資産のまま法人に賃貸するというものです。手続きは軽いですが、個人側に不動産所得などが発生します。
どの方法が有利かは、資産の種類と金額、そして税務の状況によります。金額が大きいなら、税理士に相談する価値があります。
freee会計を使っているなら、個人の帳簿にある固定資産の一覧が確認できます。会社設立の前に、何を引き継ぐのかを洗い出しておいてください。
なお、引き継がずに個人のまま持ち続けるという選択もあります。プライベートでも使う車やパソコンなら、無理に法人に移さないほうが処理が単純になることもあります。会社設立を機に全部を法人化する必要はありません。
自分で判断がつかないなら、まずは高額なものだけ相談して、少額のものは売却で処理するという分け方でも構いません。
この章で参照した情報freee(バックオフィス基礎知識)「個人事業主からの法人化とは?必要な手続きや流れなどをわかりやすく解説」(2026年9月9日 確認)
取引先との契約を切り替える

個人事業で結んでいた契約は、法人に自動的に引き継がれるわけではありません。相手に連絡して、名義を変える手続きが必要です。
継続的な取引先には、法人成りの案内を出します。会社設立の登記が完了して登記事項証明書が取れたら、それを添えて連絡するのが一般的です。
請求書の発行元も法人に変わります。振込先の口座も法人口座に変わるので、相手の経理処理に影響します。早めに伝えておいてください。
事務所の賃貸借契約も、名義変更が必要になることがあります。大家や管理会社に相談して、法人契約に切り替えられるかを確認します。
各種のサブスクリプションやサービスの契約も、法人名義に変えられるものは変えておきます。経費処理が楽になります。
インボイスの登録番号も変わります。個人事業主として登録していた番号は使えなくなるので、法人として新たに登録する必要があります。
freeeで会社設立を済ませたら、この連絡作業が待っています。登記完了から実際に切り替わるまで、数週間かかると見ておいてください。
連絡の順番も考えておいてください。主要な取引先には登記完了の直後に、それ以外には少し余裕を持って。一斉に連絡すると、問い合わせが集中して対応しきれなくなることがあります。
自分で会社設立を進めた人ほど、この工程を軽く見がちです。書類の手続きより、相手のある作業のほうが時間がかかります。
この章で参照した情報freee(バックオフィス基礎知識)「法人化(法人成り)とは?メリットやデメリット、最適なタイミングについて徹底解説」(2026年9月9日 確認)
法人口座と、お金の流れの切り替え

個人事業では自分の口座で事業のお金を扱っていたはずです。法人になると、法人名義の口座が必要になります。
法人口座の開設には登記事項証明書が必要なので、会社設立の登記が完了してからの作業になります。審査にも時間がかかるので、早めに申し込んでください。
口座が使えるようになったら、取引先への振込先の連絡、引き落としの変更、クレジットカードの切り替えといった作業が続きます。
個人事業の口座をすぐに閉じる必要はありません。廃業した年の確定申告が終わるまでは、記録として残しておくほうが安全です。
金融機関によっては、設立前から法人口座の申し込みを受け付けているところもあります。会社設立の日程が決まったら、調べておくと数週間縮まります。
審査では事業内容や取引の実態が見られます。個人事業の実績があるなら、それを説明できる資料を用意しておくと通りやすくなることがあります。
freee会計を使うなら、法人の事業所を作って口座を登録します。個人の事業所とはデータがつながらないので、切り替えの時期を決めておいてください。
freee会計を使っているなら、法人口座を登録して同期を始めるところからになります。個人事業のときと同じ感覚で使えるので、切り替えの負担はそれほど大きくありません。
自分で会社設立を進めた人にとって、この口座の切り替えが実務上いちばん影響の大きい変化かもしれません。
この章で参照した情報freee会社設立(公式)「法人口座開設の審査は早いタイミングで!設立前からお申し込み」(2026年9月9日 確認)
会計データの切り替え

個人事業と法人は、会計上まったく別の主体です。帳簿もつながりません。freee会計を使っている場合、法人用の事業所を新しく作ることになります。
個人の事業所のデータはそのまま残しておきます。廃業した年の確定申告に使うので、消してはいけません。
法人側は、開始残高の設定から始めます。設立初年度なら、資本金と、引き継いだ資産があればそれを入れることになります。
freeeのヘルプには、法人成りをした場合の初期設定の流れが説明されています。会社設立が終わったら、この手順に沿って進めるのがいちばん確実です。
料金体系も個人向けと法人向けで違います。会社設立を機にプランを変えることになるので、費用も確認しておいてください。
銀行口座の連携も、法人口座を登録し直す必要があります。個人口座の連携はそのまま残しておいても構いませんが、混同しないよう注意してください。
自分で記帳を続けるつもりなら、この切り替えの時期に一度整理しておくと、あとの作業が楽になります。
個人事業の最後の確定申告と、法人の1期目の決算が近い時期に来ることもあります。自分で両方をやるのは負担が大きいので、どちらかを人に頼むという判断も現実的です。
税理士に頼むなら、この段階で相談を始めるのが自然です。1期目の決算をどう組むかまで含めて話せます。
この章で参照した情報freee ヘルプセンター「freee会計の初期設定の流れ(法人成りをした場合)」(2026年9月9日 確認)
切り替えのタイミングをどう決めるか

法人成りでは、個人事業をいつまでで区切り、法人をいつから動かすかを決める必要があります。ここが曖昧だと、あとで会計処理に困ります。
基本は、会社設立の登記が完了した日を境にするという考え方です。ただし実務上は、月末や期の区切りに合わせることが多いようです。
月の途中で切り替えると、その月の売上と経費を個人と法人で按分することになり、記帳が煩雑になります。月末で区切ると処理が楽です。
取引先への請求も、切り替えの月をまたぐと混乱します。「◯月分から法人名義になります」と明確に伝えられる形にしてください。
消費税の観点から、切り替えの時期を選ぶという考え方もあります。個人事業の課税売上高が1,000万円を超えた場合の影響を計算に入れるためです。
この判断は税務の領域なので、金額が大きいなら税理士に相談してください。会社設立の日程を決める前に相談すると、選択肢が広がります。
freeeで会社設立の日程を組むときも、この切り替えの時期を意識しておくと、あとの処理が楽になります。
freeeで会社設立の登記申請日を決めるとき、この切り替えの月末も一緒に決めてしまうと段取りが立てやすくなります。自分で判断するなら、月末で区切るのが無難です。細かい按分を避けられます。
自分で判断するなら、月末で区切るのが無難です。細かい按分を避けられます。
この章で参照した情報freee(バックオフィス基礎知識)「個人事業主が法人化(法人成り)する最適なタイミングと目安年収は?」(2026年9月9日 確認)
個人側でやることの一覧

法人側の手続きに気を取られていると、個人側が抜けます。ここまでの内容を一覧にしておきます。

この一覧を見ると、法人成りが単なる会社設立ではないことが分かります。作る手続きとたたむ手続きが同時に進むので、管理が必要です。
期限があるものから片づけてください。廃業届は1か月以内、法人側の社会保険は5日以内と、短いものが混ざっています。
freeeで会社設立を進めながら、この一覧を横に置いて進捗を管理すると抜けが減ります。
freeeの画面には法人側の案内しか出ないので、個人側の作業は自分で管理するしかありません。会社設立の書類を作る作業と同じくらいの重みで、この一覧に向き合ってください。
自分で法人成りを進めるなら、紙のチェックリストを作って、終わったものに印を付けていくのがいちばん確実です。
この章で参照した情報freee(バックオフィス基礎知識)「【会社設立後の手続き】法人登記だけじゃない!やることリストや必要書類・期限を解説」(2026年9月9日 確認)
まとめ:作る手続きと、たたむ手続きを並行させる

個人事業から法人への切り替えについて、ここまでの内容をまとめます。
- 法人成りは、法人を作る手続きと個人事業をたたむ手続きの両方
- 廃業届は廃業の日から1か月以内。青色申告の取りやめ届も必要
- 事業用資産は、売却・現物出資・賃貸のいずれかで引き継ぐ
- 取引先への連絡と契約の名義変更に、思ったより時間がかかる
- 法人口座は登記完了後。審査もあるので早めに動く
- freee会計では法人の事業所を新しく作る。個人のデータは残す
- 切り替えの時期は月末で区切ると処理が楽
freeeで会社設立を進めるだけなら数週間で終わりますが、法人成りの全体はもう少し長く続きます。個人側の整理まで含めて計画してください。
自分で全部やることもできますが、資産の引き継ぎや消費税の判断が絡むなら、税理士に相談する価値があります。
この記事の内容は2026年9月9日時点で確認したものです。制度は変わります。実際に進めるときは、各章の出典リンクから最新の内容を確かめてください。
この章で参照した情報freee(バックオフィス基礎知識)「個人事業主からの法人化とは?必要な手続きや流れなどをわかりやすく解説」(2026年9月9日 確認)
個人事業を続けてきた人にとって、法人成りは事業の節目です。手続きは煩雑ですが、それだけ事業が育ったということでもあります。
法人側の会社設立に気を取られて、個人側が抜けやすいのがこの局面です。チェックリストを1枚作って、終わったものに印を付けていってください。それだけで漏れは防げます。
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