役員の任期と株式の譲渡制限|会社設立で決める2つの項目
会社設立で決める役員の任期と株式の譲渡制限について整理しました。freeeの入力画面で聞かれる意味と、選び方を自分で判断できるようにしています。
freeeで株式会社の会社設立を進めていると、「役員の任期は何年にしますか」「株式の譲渡制限を設けますか」という質問が出てきます。意味が分からないまま選んでしまいがちな場所です。
この記事では、この2つの項目の意味と、選び方を整理します。どちらも定款に書く事項で、あとから変えるには手続きが必要になります。自分で判断できるようにしておいてください。
株式の譲渡制限とは何か

株式の譲渡制限とは、株式を譲渡するときに会社の承認を必要とする定めのことです。
この定めがないと、株主は自由に株式を売ることができます。つまり、会社が知らない相手が突然株主になる可能性があります。
小さな会社でこれが起きると、経営に支障が出かねません。だから、小規模な会社設立ではほぼ必ず譲渡制限を付けます。
承認する機関は、株主総会にするのが一般的です。取締役会がある会社なら、取締役会にすることもできます。
ひとりの会社なら、実質的にはどちらでも同じです。自分が承認するだけの話になります。
この定めは定款に書きます。相対的記載事項なので、書かなければ効力が生じません。
また、譲渡制限があると「非公開会社」として扱われ、機関設計の自由度が上がります。
役員の任期を最長10年まで伸ばせるのも、この扱いがあるからです。2つの項目はつながっています。
freeeの入力画面でも譲渡制限の有無を聞かれます。特別な事情がなければ、制限を付ける選択で問題ありません。
将来、外部から出資を受けて株式を発行する場合も、譲渡制限があるままで問題ありません。
むしろ制限がないほうが、投資家側も警戒します。
合同会社にはこの論点がありません。持分の譲渡には他の社員の同意が必要とされていて、そもそも自由に譲れない仕組みになっているからです。会社設立で合同会社を選んだ人は、この項目を飛ばして構いません。会社設立の段階で、この項目に悩む必要はほとんどないと言っていいでしょう。
会社設立の段階で、この項目に悩む必要はほとんどないと言っていいでしょう。
この章で参照した情報freee会社設立(公式)「会社設立に必要な定款作成をかんたんに!専門知識なしで書類作成」(2026年9月9日 確認)
役員の任期は原則2年

取締役の任期は、会社法上の原則では2年です。監査役は4年とされています。
この任期が満了すると、あらためて選任し直す必要があります。同じ人が続ける場合でも、手続きは必要です。
これを重任と言います。重任の登記をしないと、登記簿の内容が実態と合わなくなります。
重任の登記には登録免許税がかかります。資本金1億円以下の会社なら1万円が目安とされています。
つまり、任期が2年なら、2年ごとに1万円と手続きの手間がかかることになります。
ひとりで会社設立をした場合、自分が自分を再任するだけの手続きに、2年ごとに費用と時間をかけることになります。
これはあまり意味のある作業とは言えません。だから、任期を伸ばすという選択肢があります。
株式の譲渡制限がある会社なら、定款で任期を最長10年まで伸ばせます。
10年にしておけば、重任の登記は10年に一度で済みます。手間も費用も大きく減ります。
freeeの入力画面でも任期を選ぶ欄が出てきます。ひとりの会社なら10年を選んでおくのが合理的です。
自分で会社設立を進めるなら、この選択で将来の手間が変わります。
2年ごとの手続きを自分でやるとなると、法務局に行く回数も増えます。会社設立を自分で進めた人なら手続き自体はできるはずですが、頻度が高いのは負担です。意味が分からないまま2年を選ぶと、2年後に手続きが待っています。
意味が分からないまま2年を選ぶと、2年後に手続きが待っています。
この章で参照した情報freee会社設立(公式)「会社設立に必要な定款作成をかんたんに!専門知識なしで書類作成」(2026年9月9日 確認)
任期を10年にする場合の注意点

任期を10年にすることには、注意点もあります。
任期が長いと、途中で役員を交代させたいときに解任の手続きが必要になります。
正当な理由なく任期の途中で解任すると、その役員から損害賠償を請求される可能性があります。
ひとりの会社なら、この問題は起きません。自分が自分を解任することはないからです。
一方、複数人で会社設立をする場合は話が別です。関係が変わったときに、任期満了という自然な形で整理できないことになります。
共同創業の場合は、2年や4年といった短めの任期にしておくという考え方もあります。
任期満了のたびに手続きは必要ですが、関係を見直す機会にもなります。
つまり、ひとりなら10年、複数人なら短めというのが一般的な考え方です。
freeeの入力画面で任期を選ぶとき、この違いを意識してください。
あとから任期を変えるには、定款の変更が必要です。株主総会の特別決議で行います。
会社設立の段階で決めておけば、この手間は省けます。
freeeの入力画面では任期を数字で選ぶだけなので、この背景までは説明されません。会社設立の段階で意味を理解しておくと、あとで後悔しません。自分で会社設立を進めるなら、共同創業者との関係も含めて考えてください。
自分で会社設立を進めるなら、共同創業者との関係も含めて考えてください。
この章で参照した情報freee会社設立(公式)「会社設立に必要な定款作成をかんたんに!専門知識なしで書類作成」(2026年9月9日 確認)
重任の登記を忘れるとどうなるか

任期を10年にしても、10年後には重任の登記が必要になります。この点を忘れないでください。
登記を怠ると、過料の対象になることがあります。会社法には、登記を怠った場合の規定があります。
10年という期間は長いので、忘れやすいのが問題です。会社設立から10年後の自分が覚えているとは限りません。
対処としては、設立の時点で10年後の日付をカレンダーに入れておくことです。
あるいは、定款や登記の書類と一緒に、次の手続きの時期をメモして保管しておく方法もあります。
税理士と顧問契約を結んでいれば、教えてもらえることもあります。ただし、登記は司法書士の業務なので、範囲外のこともあります。
長期間登記がされていない会社は、みなし解散の対象になる制度もあります。放置は危険です。
freeeには設立後の変更登記を扱うサービスもあります。そのときに使うという選択肢もあります。
自分で重任の登記をすることもできます。会社設立の登記と同じように、法務局の様式を使って申請します。
会社設立を自分でやりきった人なら、重任の登記もできるはずです。
手続き自体は、設立登記より簡単です。
会社設立の書類一式をファイルにまとめておくとき、その表紙に「次の重任登記は◯年◯月」と書いておくのがおすすめです。10年後の自分への手紙のようなものです。忘れないことのほうが難しい、というのがこの手続きの特徴です。
忘れないことのほうが難しい、というのがこの手続きの特徴です。
この章で参照した情報法務局「商業・法人登記申請手続」(2026年9月9日 確認)
2つの項目のつながり

株式の譲渡制限と役員の任期は、実はつながっています。
譲渡制限がある会社は「非公開会社」として扱われ、機関設計の自由度が上がります。
その自由度のひとつが、役員の任期を最長10年まで伸ばせるという点です。
つまり、譲渡制限を付けなければ、任期は原則の2年のままになります。
小規模な会社設立では、譲渡制限を付けて任期を10年にするというのが標準的な組み合わせです。
freeeの入力画面でも、この2つは近い場所で聞かれます。関連する項目だからです。
譲渡制限を付けることに、実務上のデメリットはほとんどありません。
株式を自由に売りたいという事情があるなら別ですが、小さく始める会社ではまず該当しません。
だから、「譲渡制限あり・任期10年」を標準形として考えてよいでしょう。
共同創業で任期を短めにしたい場合だけ、そこを変えることになります。
自分で会社設立を進めるなら、この組み合わせを覚えておいてください。
freeeの入力でも、譲渡制限を付けない選択をすると任期の選択肢が変わることがあります。会社設立の書類は、こうした条文同士の関係で成り立っています。2つを別々に考えると、選択を誤ることがあります。
2つを別々に考えると、選択を誤ることがあります。
この章で参照した情報freee会社設立(公式)「会社設立に必要な定款作成をかんたんに!専門知識なしで書類作成」(2026年9月9日 確認)
登記簿にどう載るか

株式の譲渡制限は登記事項です。登記簿に「株式の譲渡制限に関する規定」として記載されます。
内容としては、「当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を受けなければならない」といった文言になります。
役員の任期そのものは登記されませんが、役員の就任年月日が登記されます。
そこから任期の満了時期を計算することになるので、実質的には登記簿から分かる情報です。
登記事項証明書は誰でも取得できるので、これらの情報は公開されていることになります。
取引先が会社の内容を確認するときに、この情報を見ることもあります。
freeeで会社設立の入力を進めると、これらの内容が登記すべき事項として組み立てられます。
出力された書類で、意図した内容になっているかを確認してください。
会社設立の登記が完了したら、登記事項証明書を取って内容を読んでみることをおすすめします。
自分が入力した内容が、そのまま公開情報になっていることが実感できます。
自分で会社設立を進めた人なら、この確認は答え合わせのようなものです。
会社設立の登記が完了すると、入力した内容がそのまま公開情報になります。自分で入力した以上、その内容には責任が伴うということでもあります。誤りがあれば、更正や変更の手続きが必要になります。
誤りがあれば、更正や変更の手続きが必要になります。
この章で参照した情報法務局「商業・法人登記の申請書様式」(2026年9月9日 確認)
あとから変えられるのか

この2つの項目は、会社設立のあとから変えることもできます。
株式の譲渡制限を外したり、内容を変えたりするには、定款の変更が必要です。株主総会の特別決議で行います。
登記事項でもあるので、変更登記も必要になります。登録免許税がかかります。
役員の任期を変える場合も同じです。定款の変更と、必要に応じて登記の手続きが発生します。
つまり、あとから変えられるとはいえ、費用と手間はかかるということです。
だから、会社設立の段階で当面の姿を想定して決めておくほうが得です。
とはいえ、5年後10年後を完璧に見通すことはできません。当面3年くらいを想定して決めれば十分でしょう。
freeeの入力画面でこれらの項目に迷ったら、「いま必要か」を基準に判断してください。
将来必要になるかもしれない、という理由で複雑にする必要はありません。
自分で会社設立を進めるなら、なおさら軽い設計が向いています。
手続きの負担がそのまま自分に返ってくるからです。
freeeで会社設立の入力をやり直すのは簡単ですが、登記が済んだあとはそうはいきません。この差を意識して、入力の段階で丁寧に選んでください。標準形を選んでおけば、大きく外すことはありません。
標準形を選んでおけば、大きく外すことはありません。
この章で参照した情報法務局「商業・法人登記申請手続」(2026年9月9日 確認)
判断の目安

ここまでの内容を、判断の目安としてまとめます。

この表のとおり、譲渡制限はどのケースでも付けるのが標準です。付けない理由はほとんどありません。
任期については、ひとりなら10年、共同創業なら関係の見通しによって決めることになります。
freeeの入力画面でこの2つを聞かれたら、この表を思い出してください。
会社設立の段階で長く悩む必要はない項目です。
会社設立の準備では、決めることが多すぎて疲れてきます。標準形が用意されている項目は、素直にそれを選んで先に進むのも大事な判断です。自分で会社設立を進めるなら、標準形を選んで先に進むのが賢明でしょう。
自分で会社設立を進めるなら、標準形を選んで先に進むのが賢明でしょう。
この章で参照した情報freee(バックオフィス基礎知識)「会社設立を自分で行うには?費用・必要な手続き・設立時のポイントを解説」(2026年9月9日 確認)
まとめ:譲渡制限は付ける、任期は10年

役員の任期と株式の譲渡制限について、ここまでの内容をまとめます。
- 譲渡制限は、株を譲るときに会社の承認を必要とする定め
- 小規模な会社設立では、ほぼ必ず付ける
- 譲渡制限があると「非公開会社」になり、任期を最長10年まで伸ばせる
- 役員の任期は原則2年。満了のたびに重任の登記が必要
- 重任の登記には登録免許税がかかる。10年にすれば頻度が減る
- 共同創業なら、任期を短めにして関係を見直す機会にする考え方もある
- どちらも登記事項。あとから変えるには定款変更と変更登記が必要
freeeの入力画面でこの2つを聞かれたとき、意味が分かっていれば数十秒で選べます。
ひとりで会社設立をするなら、「譲渡制限あり・任期10年」が標準形です。迷ったらこれを選んでください。
この記事の内容は2026年9月9日時点で確認したものです。制度は変わります。実際に決めるときは、各章の出典リンクから最新の内容を確かめてください。
この章で参照した情報freee会社設立(公式)「会社設立に必要な定款作成をかんたんに!専門知識なしで書類作成」(2026年9月9日 確認)
譲渡制限と役員の任期は、会社設立の入力画面で「これは何だろう」と思う代表的な項目です。それでも、意味さえ分かれば選ぶのは一瞬です。
ひとりで始めるなら、譲渡制限は付ける、任期は10年。この標準形を選んでおけば、10年間はこの項目のことを忘れていられます。
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